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物語

夜のダンス



2007年01月14日(日)夜のダンス12〜由生(ゆうな)

28分?‥‥・意識してなかったけれど、今異次元にいるんだろうって分かった。
そういえば、幼子達は親はどこにいるんだろう。
誘拐されてなければいいが‥。
ふと由生(ゆうな)の事が頭によぎった。
もう小学3年ぐらいかしら。あー懐かしいなあ。
従姉妹の子供で、赤ん坊の時は何かとかりだされ、おしめを替えたり、ミルクを作ったり、散歩に行かせたり‥‥。
‥‥・はっ‥‥真弓(まゆみ)、子供の世話してない!‥大方、私がしてた‥・。おかげで、赤ん坊の泣き声の意味(ほら、腹減ったって泣いたり、ちーがでたといって泣くでしょう。)が分かったりするのだ。
‥‥真弓の旦那と二人でやった‥・由生はだから、お父さん子だ‥・多分。
なぜ、由生の世話にかりだされたか‥・初めに由生を見に行った時‥・あまりに可愛くて、勢いで。

「俺、世話したいなあ。」などとぼやいたのが‥・真弓はすぐに「じゃ、次の休みから世話してね!」と。

‥‥真弓、二人目の時もかりだすのだろうか‥‥。
でも子供ってエンジェル係数、かかるしなあ。

どうなんだろ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥「ふわふわ♪ふわふわ♪」‥‥はっ。

ハルユキさんは、私の髪をひっぱって遊んでいた。
そりゃ、あの‥・考えていた私がいけないのか?‥・痛いって!
「ハルユキさん‥・痛いです。」

2007年01月14日(日)夜のダンス13〜予約

ハルユキさんは、私の髪をひっぱって遊んでいた。

そりゃ、あの…考えていた私がいけないのか?…痛いって!

「ハルユキさん…痛いです。」

「…・はっ…ごごごめんなさい。あの、駅つきましたよ。」

え…駅って、さっきここから、歩いていたのに…・。

「駅って私の家はまだ…」

「…今から、星のレールがひかれますから…お騒がせしたお詫びに…。」

星のレール?

…そんなのひかれたら、駅、困るだろうに…。

一応、迷惑かけたって分かってるんだね…。

地面にふありと降り立つと、ハルユキさんは、私の手を握ってひっぱり歩き出した。

…・ちょっと恥ずかしいな…。

ハルユキさんは、プラットホームのベンチに腰掛けて、「…ひとの手ってぬくいですね。…溶けてしまう‥・。」

とかぼそい声を震わせた。

‥・え?‥・どうなんだろ‥・そう思って、握っている手をみやる。

……‥ハルユキさーん…・手がないよ‥‥。

「‥・あの‥・また‥・お会いできたら‥・その時に、約束ですよ。」

‥・このままでは、ハルユキさんがなんだか分からないけれど、大変な事になると思って、声をかけた。

溶けたらしいハルユキさんの部分‥・とろとろってたれるのではなくて‥・ふわりと粉雪の様に。
舞い上がった‥‥・私はまた、綺麗に感じて暫し見とれていた。
「約束‥・?‥・なんですか、それ。」
「‥・ハルユキさんと私の‥・なんていうんだろう‥・プロミス?」
‥‥プロミス‥・って分からないよ‥・しかも思いっきりカタカナ発音だ‥。
「‥‥‥‥‥あ‥‥プロミス‥・。約束?‥‥‥‥予約?」
‥‥予約‥・おしい‥・おしいけど。
ハルユキさんに予約って‥‥ちょっとそれ、危ない‥・デートじゃないんだから‥・。
私が少し、汗をかいていると、ハルユキさんは、ああと言った。
「‥‥‥私が貴方にケーキの予約すればいいんですね!」
‥‥私は、ケーキ屋さんじゃないぞ‥・。
約束って‥‥分かりやすく言えない‥・。
べ、勉強が足りないな‥・。

2007年01月14日(日)夜のダンス14〜星のレールがひかれます
ちゃらちゅるちゃらちゅる‥‥かたんかたんかたん。
ちゅらちゅらちゅれちゅれ‥・ぱりんかたんかたん。
ちゃらちゅれちゃらちゅれ‥‥かたんかたんかたん‥‥。
星屑をひきましょ‥・かたんかたんかたん。
お休み、星よ‥・ここは星の墓場よ‥・しゅれしゅれしゅれ。
星屑ひきましょ‥‥‥しゅれしゅれ‥‥しゅれしゅら‥・かたんかたんかたん。
貴方の鋭い心臓引き裂いて‥‥私の刃物はよくきれる‥・きらきれきられ。
お休み、星よ‥‥ここは星の眠りよ‥‥誰もこない、誰もこない‥・。
お休み、星よ‥‥星屑ひきましょ、星のレールに。
どこからか、歌声が悲しそうに響く。
「ハルユキさん‥・星のレールって‥・。」
「いつも空にいて疲れた星のお休みする場所が、星のレールです。」
ハルユキさんは、ふうと息を吐くと、此方を見た。
「‥‥もうすぐ、星のレールがひかれます。レールがひかれたら、その上を歩いてください。
‥‥また、お会いできたら、またケーキの事、お願いするかもしれません。
‥‥私はいつも、ひと達にふりそそぎます。春の雪と書いてはるゆきと。
‥‥・明日、お仕事に出かけられたら、いいことがあります。‥・ね。
‥‥‥‥・約束ですよ。‥‥‥もう行かなくちゃいけません。
have a good night 。」
そう言うと、ハルユキさんは、指を鳴らした。
私は私の姿になった。
‥‥良かった‥‥ただのおじさんだ‥・ハルユキさんは自分の髪の毛を一本取ると、
私の手首に結わいつけた。
「あなた、ひとですから、星のレールを渡っておうちの玄関を開けるまで、これを取らないでください。
‥・一応、お守りです。明日には消えてます。」
「色々、有難う‥・あの幼子達にもよろしくと‥‥あの、鞄は?」
「貴方の横にありますよ?」
ハルユキさんは、ベンチから立ち上がるとくるりと回った。
ふわふわと雪が溶けるように消えていき、私は、空から粉雪が降り始めたのを見た。

2007年01月14日(日)夜のダンス15〜若者

オジチャン、オジチャン、イッショニカエロ。
ワニサンパカパカ、キャハハハハ。
オジチャン、オジチャン、アソンデクレタ。
オジチャン、オジチャン、イッショニカエロ。
微かに、飛び跳ねながら此方に声が向かってきた。
一瞬にして、暗くなってしまい(ハルユキさんが光っていたのだ。)、星のレールだけが穏やかな光をはなってい

た。
「‥・こちらこそ、遊んでくれて有難う。」
そう、私が言って、横の鞄を持つと、しゅるっと上から幼子が目の前に着地した。
「わあい。」
「おじちゃん、わにさんもらっていい?」

もう一つ声がして、横を見ると、長靴提灯を持つ幼子がいた。
「もう一つもあげようか?」
「いいの?」
「‥・いいよ。」
私が長靴を脱ぐと、長靴は、ペコパコ楽しそうに、飛びながら移動していく。
「まてまて。」
また幼子が現れて、長靴を追いかける。
私の横にいた幼子は、「あのねえ。」と。
「どうしたんだい?」
「うんとねえ。」
「うん。」
「もう一人、一緒に帰ってもいい?」
「え?なにかな?」
「このひと‥・。酔っ払って寝てたの‥。」
「‥・あ、はじめまして。」
なんと、先ほど、コンビニにいた若者ではないか。
「はじめまして。」
「あー、ほっとした‥・。この子が肉まんが欲しそうだったから‥・買ってあげたんだけど、迷子かな?って思ってちょっとついてきたんですよ。」
「‥‥‥なるほど。」
「ばらしちゃだめー。内緒内緒。」
「そうだったね、内緒内緒だったね。‥‥今の忘れて下さい。」
あははと笑って頷いた。
「いいですよ‥・君、馴染んでるねえ‥・。」
「あー、だって飲み会とかで、飲まされたりしてふらふらのところで、
助けてもらったりしてますからねー‥・って、さっき酔っ払いにさせられた!(驚愕。)
‥‥だめだよー‥・嘘はいけないんだよ‥・。」
「そうか‥・。」
「あー、ごめんなさいー。もう助けにいかないよー。」
「(汗。)弱み握られてる‥・!‥・それだけは‥・っ。」
星のレールを歩きながら、若者と私、それに鰐の長靴提灯をもった子、長靴を抱いている子、スキップして
歩く子‥‥楽しくおしゃべりをした。
いつのまにか、星のレールが分かれ道になっていて、私は左、若者は右にわかれた。
幼子二人は、若者にくっついっていった。
「‥・あのねえ‥・。」
「うん?」
「ぼくたちね‥・よるのこっていうんだって!」
「よるのこ?‥‥そうなんだ。」
「あのね、だからね、またね。」
「うん。」
「夜になったらね、またおじちゃんにあえるかな?」
「あえるかもね。」
「わあい。」
「よかったね。」
「うん。」

2007年01月14日(日)夜のダンス16〜星の墓場は溶けていく
‥‥‥‥玄関の前にくると、小さな雪達磨が片隅に置いてあるのに気がついた。
「‥・あ。ハルユキさんだ。」
「え?」
「ハルユキさんがおいていったんだよ。」
「そうなんだ。」
「うん。おじちゃん、またね。」
「またね。」
幼子は、ピョンと、星のレール(玄関の前まで続いていた。)に乗ると、振り返ってにこっと笑って、
これもまた、溶ける様に消えた。
すると、どうだろう‥・。
星のレールも、ドミノ倒した後の勢いの様に、しゅるしゅるきらきらと消えていくではないか。
星よ、さよなら、いとしい君のまなざしの‥・星よさよなら。
役目を終えてさようなら。
しゅるしゅるきらきら、さようなら。
星の墓場は溶けていく。
しゅるしゅるきらきら、さようなら。
星のお休み、溶けていく。
「さようなら。」
そう呟くと、
ええ、ええ、さようなら。と歌声がかえってきた。
‥‥‥綺麗な歌声だったな。
玄関の扉を開けると、‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・。
2007年01月14日(日)夜のダンス17〜花咲みてり

そっと 芽をひらきませんか。
もう春は届いてますか。貴方の心に届いてますか。ふんわり、綿菓子みたいに。

懐かしい切ないめぐみだけど、貴方の心に届いてますか。

もう芽をひらきませんか。ほらほら、くるりと回るなら、花咲みてり、花咲みてり。


ハルユキさんの歌声がした気がした。
私はキョロキョロと夜の街を見渡すけれど、いつのまにか、寂しくなった。
あの晩の事が脳裏を霞める。けれど、本当にあった事かなんてわからないのだ。
なんかあまり鮮明にはおもいだせない。
昔、ハルユキさんの歌声を聴いたと感じた。子守唄の様に聴いたと。
ハルユキさんと約束したのだ。ケーキを見せてあげると。いつ別れたのだろう。

電車に乗ると、すいている座席につき、鞄から、ノートを取り出す。
鞄は夢?の中の鞄とは違う。そんな感じがするが、ずっと愛用している唯一無二の鞄だ。ノートにはあの不思議な出来事を早くかきとめようと、たくさんメモしてある。退職願がはらりと、電車の床に落ちた。
よいしょと呟いて、ひろいあげようとした。
摘んだが、勢いで書いてしまった自身の筆跡が目に飛び込み、丁寧に書いていたら、すぐに提出してしまったかも知れないな。まさしく猪突猛進気味な気持ちであったなあと。苦笑し、それを、小さく折り畳み、鞄の中にしまった。

取り出したノートに、ハルユキさんの歌声についてかきとめる。5頁目になるが、この頃、この時間が好きな自身がいる。いつか、まとまったら、社内報の隅にでも載せてもらえる、ような、短い作品を書きたいな。そんな秘密の目標を持っている。社員のコラムなど、投稿する場があるのだ。
わたしが、そんな秘密があるなんて、まだ家族も知らないだろう。
私は、ハルユキさんの髪の毛が巻きついていた、手首をそっと見遣り、まだまだ家族には内緒だな。
‥・そうだな、あいつにぐらいは、聴かせてやろうかしら。
‥‥小さな冬の夜の話を。

おしまい

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2007年2-5日 加筆しました。
2008年1-13日 整頓しました。漢字変換を少ししました。
2009年7-13日 ブログリンクを削除しました.
2010年10-30日 著作権表記を更新。
2014年9-20日 子どもの名前を、「由生(ゆうな)」に変更。千羽鶴に祈りをこめて。

月光物語 月光物語2

2007年01月14日(日)夜のダンス18〜ネタバレ*あとがき

未読の方は1からお読みくださると・・・楽しめます。

また月をみあげて1からお読みになるともっと楽しめます。

私(自称おじさん)・・・・
           
うーん、年齢は・・・30才より上?なんだか、一応、趣味というか・・・。
小説をかきたいとか、いろいろ悩んで、仕事やめようかとかいろいろ・・・。

              そんな感じ・・・。

最初は、女の子?・・・いや・・ここは・・・・奇をてらって・・・っていうか、てられたかどうか知りませんが。

              男性にしよう・・・と。

本当は恋のダンス?とか思ってたんですが。

(そういや、私はフラメンコを観た事ある。)


              はじめから設定とか細かくしてないのです。



由鶴(ゆうづる)・・・・・・・・・
    「私」の親戚の子・・・です。女の子?この子も物語にしたいなとかいろいろ・・・。

真弓(まゆみ)・・・・・・「私」の従姉妹・・・・・・・・・・・地獄耳。由鶴の母。「私」の回想ででてくる。
              この時、「私」は仮死に近い状態でした。

ハルユキメグミ・・・・・
・あれですよ・・・ギリシア神話のふあんなので、春の曙の女神(えーとなんか楽器もってる)・・・っていうのを。

うーん、春の雪・・・あったかい・・・・なので春を告げる雪みたいなのを、降らせるというか・・。
自然霊というか・・・・。夜に降る雪とかありますやんか。ああいうのの担当みたいな。

      イメージは昔描いて冊子の表紙の最後を飾った自作の作品の女の子がモデル?

  ちなみに、京都市のHPのどこかに、冊子表紙として掲載されていました。ボランティアの。


クマガイ・・・・・・・・一瞬だけ名前をハルユキさんが言ってますが、月をみあげてに出てくる老年の紳士。

よるのこ・・・・・・・・もう、抽象表現「幼子」「夜のちびちゃんたち」など使ってあらわしたのですが、満月のおそうじに出てきます。

     自然霊。提灯をもつイメージとか・・・・油絵で誰かが描いていた作品・・・好きですね。

     あんな感じ?ですね。たしかあれは、江国香織の文庫カバーの絵になってたと思うのですが・・・。

           しゃべったのは夜のダンスがはじめてですね。



若者(高橋誠)・・・・・・・・・・

誠さん、やさしいいいひとです。

          また、続編があればその時にでもと使いたいなーと。

解説:クリスマスケーキっていう物が出てくるけれど、日本の比較的新しい西欧文化であって、それをハルユキメグミさんは、見たことも無いのです。
この物語位から、寒すぎた。料理のバリエーションは増えませんでした。        


2010年10月30日 著作権表記更新。現在、なぞなぞ大会はやっていません。
2012年9月13日  あとがき、すこし修正。
2013年6月24日 頁アドレスの更新。金物屋さん、増加中。
2013年9月25日 解説を追加。
2014年9月20日 あとがきを追加。

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