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物語

夜のダンス



2006年12月26日(火)夜のダンス6〜幼子

「此方」
先程の幼子が、ついてこい、と言うように引っ張る。やれやれ。
暫く歩くと公園に入った。ベンチに腰をおろした。
隣にチョコンと座った幼子は私の服をぎゅっと握ったままだ。
観念して、次は何が来るかと考えていた。
タトタトタト。
「オジチャン、肉まん。」やってきた幼子は、雪の様な白いものを、私に持たせると、私の隣の幼子の隣にチョコンと座った。
「ありがとう」
礼を言ってかじった。

「あのね。」
隣の幼子が口を開いた。

「なんだい。」
「雲のカバ。」
「うん?」
「シュル。て。」
「うん。」
「もっとみたいて。」

「おじさん、言ったなあ。」
「うん。だから、皆。ワアイ。て。」
「うん。」
なんとなく、検討がついた。鞄が飛んでいった訳も。
これで帰れそうかな。肉まんはそのお詫びという訳か。
不思議な体験ができたから、よかろう。

2006年12月27日(水)夜のダンス7〜ハルユキサンガ
オジチャン、オジチャン。
ハルユキサンガ。
オジチャン、オジチャン。
ハルユキサンガ。

どうも寝ていたらしい。早く帰らないと。今何時だろう。
私は、目頭がつんとするのを、コシコシ。
ふと私の前に、白いドレスを来て、蓮の葉のようなふきの葉の様なものを傘みたいにさす女性を見つけた。
「庚、充孝さんですか?」
カノエ、ミチタカサンデスカ。
はて。どなたかな。
「丸井はるかさんですか。」
マルイハルカ。ああ、あのふっくらした、それは、私の高校の時の化学の先生ですが。
「いえ。違います。」「あ。○○○○さんですね。」
たしかに、それが私の名前だ。なんだろう?このひと。
「一緒に踊りませんか?」
「え。私は帰宅したいのですが。」
「私ハルユキメグミです!」ハルユキメグミ?確かにそんな名前、記憶がありそうな、なさそうな。
「夜のちびちゃん達がお世話になりました。私は鞄の中の書類、食べちゃって。」
ええ〜!食べた?どれを?
紙片?メモ?退職願?手帳?写真?どれを?「どれを?」
2006年12月28日(木)夜のダンス8〜公園          
「○○工業…○○薬品……緑の手帳……彼は仙人……手帳は高橋……」
ぜ、全部じゃないか。
私は頭をかいた。どうする?この人は日本国憲法で裁けるだろうか。
そもそも、この人は人なのか。狸や狐にばかされてはないか。
「…………の記憶を食べました。」
え。記憶を食べました?そんな事できるのか?いやいや。出来るかも。
私には出来ないと思うが、もしかして出来るかも。
ハルユキさんは、私の頭をじっとみていた。
私は、思い出そうとした。簡単だろう?
「踊りましょう。」
ハルユキさんは、私の服を引っ張った。
「こんな夜は踊らないと。」
「道理が理解出来ないが、踊ろう。」
私は提灯を持って立ち上がった。提灯はゆらゆら仄かな明かりをともしていた。
ハルユキさんをその灯りで照らす事になったが、灯りがハルユキさんを照らすと、ハルユキさんは消えてしまった。え。と思い、提灯をもちかえた。ハルユキさんは、ぼんやりとうかびあがったまま。灯りがハルユキさんの一部(肩とか)を照らすとその部分はスウッと消えてしまう様なのだった。
ハルユキさんが、「はい。スタート。」パチンと手を鳴らすと一気に私の持っていた提灯が、とびあがった。だが、長靴なので、少々笑いを誘う。パカパカと穴の部分を動かしながら、とんでいる。ハルユキさんが、持っていた葉をはなすとそれは、ちりゆく。私は、その様子が綺麗だったので拍手をした。私が拍手をすると、ハルユキさんは、私の服をはなした。私の服が有り得ない事になった。なぜか、ドレスになった。
2006年12月29日(金)夜のダンス9〜ドレス

ドレス。まあ、ハルユキさんが楽しそうならいいか。て。私は女性じゃないんだけどなあ。初めて着た。足とかがちょっと寒い。
「あの、何でドレスですか?」
「え。」
ハルユキさんは私を見て、首を傾げた。まいったな。
「あ。」
ハルユキさんは手を上にあげた。

私は何だか変な感覚がして、自分の手を見た。先程とはうってかわり、細くてすらりと伸びた指先。
「さあ、いきましょう。」
「女性になったら、帰る時困るのですが。」

私の声は女性のそれだった。ハルユキさんは顔をしかめて、それじゃないと今は困るんです、と小さく呟いた。
今は。なんでだろう。自分の胸元が恥ずかしい、見られない、今なら女の人の苦労が僅かだが分かりそうな気がした。まあ、気のせいかもしれない。色々聞こうとしたら、ハルユキさんはふあり。私の手を掴んだ。引っ張られて、いきなり中に浮かんだ。重心が上手くとれないので、ハルユキさんの腕を掴んだ。
「失礼。」
そうは言ったものの、動けない。ガチガチ。落ちたら骨折じゃないのかな。ちょっとこわくなった。
「記憶を食べたと私、いいましたね。」
「…う。…は、はい。」察してくれぇ。
フィリン。
いつのまにか私達は、屋根を次々に蹴って飛びまわっていた。

私も大分空中感覚というか、空にいるのに慣れてきた。
「さっき、いいかけた事なのですが。」
「はい。」
フィリン、ヒィフゥ、トン。
ヒィフゥ、フィリン、サフィン。
フタァリ、ヘタナセ、ヒィフゥ。
「それで、ケーキっていうのが、あって。」

多分、コンビニで何かを購入した時、店員がクリスマスケーキのチラシを入れてくれたりしたのだろう。あ。それで、同僚がケーキを注文すると言ったから、参考にとあげたかなあ。
「今、ちょっと記憶を戻しました。吐きました。」
そ、そうなのか。今のは吐かれた記憶だったのか。多分コンビニのレシートの記憶だろう。ていうことはあの鞄の中に財布入れてたんかな。

「あの鞄はどこに?」「そのケーキが見たくて。」
会話がずれてる。ハルユキさん、わざとじゃないですよね?もしかして、ハルユキさん。

ケーキを見られない?何故?
私が不可解そうに、ハルユキさんを見つめていると、ハルユキさんは泣きそうになった。

2006年12月31日(日)夜のダンス11〜‥‥。 神遊び

私が無言になってしまったので、ハルユキさんは、自分の髪の毛を浮かばせて遊んでいた。

「ふわふわ♪ふわふわ♪」
「…えーと…なんてお呼びしたらいいでしょうか。あなたのことを。」
「…・はっ…・。ご、ごめんなさい。わたし、髪の毛に夢中でした。」
…・ハルユキさん。…・あなたって、ちょっとずれてませんか。
別にいいんですけどね。私の若いころにハルユキさんみたいな人とであったような…そんな、懐かしい感じがするし。
「…・えっと…・えっと…・メグミって…呼んで頂けたら、はいって返事します。」
…いきなり、呼び捨てですか…?…初対面なのに?
ちょっと、わたしみたいなおじさん(今は女の姿してるけど。)が、あなたみたいな若い…ひと?…ひとかな?
ひとじゃない…よね?…兎に角、ハルユキさんを、呼び捨てにしたら…・なんか変におもわれませんか。

「…じゃあ、メグミさんでいいですかね。」
散々、心の中でハルユキさんって呼んでいるのに、今更、メグミさんって…。
「…‥テレレ。」
「……‥汗。」
泣くのはおさまったけど、今度は♪♪なハルユキメグミさん。
飛ぶのが物凄く速くなって、一緒にいるわたしの息が出来ません。
苦しいです。…・メグミさん…・私、肺呼吸する人間なんですよ…。**:;****…。
「…・はっ…‥。ごごごごごごご…‥ごめんなさい。あなた、ひとでしたね。」
「………………………………はぁはぁ‥・はぁぁぁ‥・はぁ‥。」
やっととまってくれたので、助かった。息が‥息が困難で死ぬかと思った‥・。
‥‥というか‥‥わたし、いつになったら、家に帰られるのでしょうか‥・。
‥‥‥‥‥もしかして‥‥メグミさん、あなた次第ですか?
‥‥う、浦島太郎になりたくないです‥・。
「‥‥あの、何時間、経ったのでしょうか。」
「‥‥‥・えーと‥・あなたがちびちゃん達にあって私に会うまで、20分。私に会ってあなたと飛ぶまで2分。そして現在まだ6分しか経っておりません。
‥‥な・の・で‥‥まだ人間世界の時間では、28分しか経ってませんね。」

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